運動はさまざまな生活習慣病を改善・予防します。また、それらの身体面だけでなく、精神面でも運動週間は有効であることが分かってきました。
ここでは、エクササイズが身体や精神にとってどのようにいい効果があるかを解説し、生活に取り入れやすいエクササイズをご紹介します。
目次
エクササイズが身体や精神にどういいか?
運動は健康にいいとはよく言われますが、具体的にはどのようにいいのでしょうか。
以下は、厚生労働省がHPで公開している、運動により効果が見込める病気予防一覧です。
動脈硬化性の病気、特に心筋梗塞の危険性を減少
体脂肪を減らし体重のコントロールに有効
脂質異常症(低HDLコレステロール血症、高トリグリセラ イド血症)の予防・改善に有効
高血圧の予防・改善に有効
糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に有効
骨粗鬆症による骨折の危険性を減少
筋力を増し、色々な身体活動の予備力が向上
筋力とバランス力を増やし、転倒の危険性を減少
乳がんと結腸がんの危険性を減少
認知症の予防・改善に有効
睡眠障害の改善
ストレスの解消、うつ病の予防・改善に有効
シェイプアップし、自己イメージが改善
家族や友人と身体活動の時間を共有
良い生活習慣が身につき、悪い生活習慣を止めるのに有効
老化の進行を防ぎ、QOL(生活の質)の改善に有効
厚生労働省HP「疾病予防および健康に対する 身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002q9dz-att/2r9852000002q9k7.pdf)
※こちらの引用元には「過剰の危険性」も明記されていますので併せてご覧ください。運動のやり過ぎは逆に健康を損なうため、注意して行って下さい。
運動は面倒。分かっていても、運動不足になりがち
オフィスワークならとくにですが、日々の生活で運動習慣を身につけるのはなかなか難しいものです。運動は健康にいい、それは分かっていても、仕事が終われば疲れていておっくうになるし、休日は別の用事がある、ゆっくり休みたいなど、どうしても運動から遠ざかる人は多いです。
厚生労働省はどんな運動不足の背景も分析しています。それがこちら。
これはとくに、機械化やIT化が進んだ職場のケースですが、多くの職場でも同じことが起こっていると思います。
そして、そこには見事に負のスパイラルがあるようです。職場の疲労や座位状態(座って仕事をする状態)の増加に伴い、現代社会で身体を動かす機会はますます減り、新進的な余裕の低下が最終的には休日に身体を動かす機会さえ減らしてしまう、そんなループがあるようです。
ストレスは精神を疲弊させる
近年、長時間労働などの過労でうつ病を発症し自殺してしまうニュースをよく聞きます。また、仕事によるストレスでうつ病や精神障害を発症し、労災認定されるケースもあるようです。
近年、仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が関係した精神障害に ついての労災請求が増え、その認定(発病した精神障害が業務上のものと認め られるかの判断)を迅速に行うことが求められています。
出典:「心理的負荷による精神障害の認定基準」厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf)
ここまでのケースでなくても、日々のストレスにより健康を壊したり、意欲を失ったりする人は多いようです。
ストレスは仕事の人間関係、仕事内容、私生活などいろいろなシーンで生じるもので、落ち込んだり、やる気がでなくなったりします。ある人は自分の部屋に帰ってきて元気になるかもしれないし、家でテレビを観ていて元気になるかもしれません。また、とくに何もしなくても時間がたつと元気になる人もいるでしょう(もちろん、ストレスが深刻なものであれば誰かに相談したり、医師や専門家を受診することも必要です)。
このように私たちは日々、ストレスに曝され、抱えたストレスを自分なりのやり方で解消して生きている、と言えます。
その解消方法の一つとして運動もあります。運動はストレス解消や気分を変えるのに大事な役割を果たします。
そのため、国は職場づくりの一環として社員に毎日運動しやすい環境を提供することも勧めています(以下)。
職域における保健事業を通じて社員の健康づくりを支援していく際、社員個人への 働きかけに加えて、「社員が身体活動を増やし、運動しやすい職場づくり」という視点を もつことで、より効果的・効率的な保健事業を展開することが可能になると考えられる。 例えば、通勤方法として、自家用車よりも公共交通機関や自転車、徒歩等を職場全体 で推奨すること等が考えられる。
「健康づくりのための身体活動基準2013」厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf)
体を動かすと、なぜストレスや悩みは軽減するか?
先ほどの「エクササイズが身体や精神にどういいか?」の章で、運動により「睡眠障害の改善」「 ストレスの解消、うつ病の予防・改善に有効」があると述べましたが、これについて少し詳しく説明します。
ストレスは、ストレスを引き起きおこしているもの(ストレッサーと呼ぶ。騒音、寒さ、炎症、怒り、恐怖、不安など)に直面したときに、人が自分の心や体を守ための防衛反応と言われています。いわば、緊急的に交感神経系を働かせて戦闘態勢を維持する生体反応です。
具体的には、交感神経系によって副賢髄質からアドレナリンを分泌させ、心拍数増加や筋肉血管拡張、呼吸数増加を引き起こします。これがストレス反応と呼ばれています。
ストレス反応が終わると、私たちは心身の機能を回復するリラックス反応になります。リラックス反応では副交感神経系(気分がいいときや寝ている時に優位となる神経系)が優位となり、血圧低下や唾液分泌の増加、消化機能の活発化などが起こります。次の危機に備えるために栄養を摂取しようとするのだ、と考える専門家もいます。
このように人間は、過酷な環境における生存競争の中で巧妙な身体システムを身につけました。しかし、ストレス状態が異常に長く続くと、身体や内臓系に負担がかかりつづけ、心疾患や不眠症、食欲不振、頭痛などの体調不良を起こします。
運動習慣は自律神経のバランスを改善することが分かっており、気分の落ち込みが改善したり、睡眠リズムが改善したり、心とからだのリラックス作用があります。そのため、体を動かすとストレスや悩みは軽減します。
出典1:「こころもメンテしよう」厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_01.html)
出典2:「音楽で運動後の心疾患リスクを減らす可能性」(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160210web_.pdf)
手軽に行えるエクササイズをご紹介
フットサルや週末テニス、登山など、好きな趣味を運動週間として長年続け、仕事のアクティビティにうまく繋げている人はたくさんいます。
でも、団体競技や高価な道具を必要とする運動はなかなか敷居が高いもの。普段から運動になじみの人やそもそも運動が苦手な人なら、とくにそうです。
そこでここでは、仕事帰りに一人でも手軽にできる、あまり道具を使わないでできるエクササイズをご紹介します。
ウォーキング
なんといっても手軽なのがウォーキングのいいところ。仕事終わりや週末に、電車の一駅分を歩いてみるなど、生活にうまく習慣として取り入れたいものです。仲のいい友達を誘えば、いろんな話ができて気分もよくなると思います。
また、市区町村によってはホームページでウォーキングマップというものを出していますので、参考にしてみてもいいかもしれません。たとえば山梨県甲府市なら以下のような感じです。
ジョギング(ランニング)
ジョギングとは、時速9.6kmより遅く走ることです。また、右足と左足の両方が同時に地面から離れる瞬間があることが「走る」と「歩く」の違いです。
ジョギングは、ウォーキングのときの比べ、膝などに体重の3倍以上の加重がかかると言われています。そのため、太っている人や関節が弱い人がジョギングを行うと、脚の怪我や障害に繋がる危険が高いと言われています。
したがって、はじめてジョギングを行う場合は、かかとや膝の状態に注意しながら、心配な人は必要に応じて整形などで相談しながら、ゆっくりと始めた方がいいと思います。
それでもジョギングはいいものです。必要なのはシューズとウェアだけ。仕事帰りでも手軽に行えます。また、習慣になってくると、週間天気が気になってくるのもジョギングあるある。今週は寒いから、手袋や帽子を身につけよう、とか、でも10分したらあったかくなるから、あまり厚着はやめよう、とか。
季節を意識するものジョギングのいいとこ。お気に入りのジョギングコースができると、花の匂いや虫の音など、道端の季節ごとの変化にも気がつくようになります。
ヨガ
必要なのはウェアとマットだけ。教室に通うなら講習料が必要です。また、動画を見ながら自分なりにヨガのポーズを習得していくのも現代ならではのやり方かもしれません。
ヨガは腹式呼吸
ヨガは腹式呼吸で、副交感神経が優位となるため、リラックスできる効果があります。
ピラティス
基本的に必要なのはウェアとマットだけ。マシーンを使うことも。
芸能人やアスリートにも人気です(人気の理由は「ピラティスをやっている芸能人・アスリートのまとめ」で分かります)。
ピラティスはリハビリの要素があり、専門的な知識を持ったインストラクターによる指導が必要ですが、ピラティスを続けると、身体の骨格や不調の原因を把握しやすくなり、長く身体を健全に保ちたい人には向いているエクササイズです。また、他の運動をしている人が身体の状態把握や怪我の回復、温存のためにピラティスに通うことも多いです。
実は、ピラティスは脊椎、背骨の流動性を高める、一つ一つの脊椎を滑らかな動きにするエクササイズでもあります。それにより、とくに胸椎あたりに集中する自律神経に作用することでそのバランスを改善し、精神面へいい働きかけができると言われています。
ピラティスは胸式呼吸
ピラティスの呼吸法は胸式呼吸で、交感神経が優位となるため、気持ちがすっきりします。
当サイトでも、ピラティスの企業派遣を行っていますので、お気軽にお問い合わせください(メールフォーム)
水泳
意外と手軽なのが水泳。市民プールや区民プールなど、市町村の公共施設が1回300円前後などで使える地域も多く、仕事帰りにちょっとエクササイズが可能です。水泳は水泳後に家に帰ると、以外にゆっくりできる時間があったりします。
問題は公共施設の営業時間。仕事が遅くに終わる人だと、営業時間に間に合わなかったり、間に合っても、十分に時間がとれなかったりします。
そんなときは、「今日は定時にあがる、わたしは泳ぎに行くから!」と同僚に宣言して、その日の仕事を効率的に終わらせるのも手かも(笑)。
水泳は、全身の筋肉を使うエクササイズになります。水圧によって全身の血流がよくなり、マッサージ効果が期待できます。
また、水の中であるため、ジョギングで起こりうるような膝や脚への負担・故障が起こりにくいのも水泳ならではのメリットです。
人類は原始時代から食料や移動、衛生(身体の洗浄)のために、湖や川や海で泳いでいたと言われています。およそ9000年前の壁画に人が泳いでいる様子が描かれています。また、古代ギリシア(約9000年前〜5000年前)ですでに、『身体訓練の一科目』とされており、今も小学校でプールの授業があるように、泳ぐという行為は、走る・歩くと並び人間の基本運動の一つなのかもしれませんね。
(音楽)
音楽は運動ではありませんが、運動と組み合わせるといいという意味で、ここに挙げました。
実は気分を落ち着けるような音楽を聞きながら習慣的に運動すると、心身のバランスが整う、という効果があります。具体的には、自律神経活動のバランスが整い、運動後も副交感神経活動の低下を和らげることができるため、心臓などにも負担がかかりにくく、効果的に心身のバランスを整えやすい効果が得られる、ということです。以下は最新の大学の研究結果です。
今回、若年健常者を対象とした研究において、自転車こぎ運動の際に気分を落ち着かせる音楽を聴きながら運動を行うことで、運動後の副交感神経の低下を抑えることができました。運動療法に音楽療法を組み合わせることで、様々な疾病に対する新しいリハビリテーションプログラムの確立につながることが期待されます。
「音楽で運動後の心疾患リスクを減らす可能性」(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20160210web_.pdf)
ただし、イヤホンをつけての運動は危険ですので、音量を下げる、周りの音がちゃんと聞こえるように配慮するなどの注意が必要です。
まとめ
以上が、『運動は身体や精神にどういいか?おすすめのエクササイズをご紹介』でした。普段からオフィスワークしていると、なかなか運動から離れがちですよね。この記事を読んで、ぜひ『いい運動習慣』を身につけてください!